2025年12月全面施行「建設業法・入契法」一部改正の背景と目的
法令関連
建設業は社会基盤の維持や災害対応を担う重要産業ですが、就業者減少と資材高騰が深刻化しており、将来にわたり役割を果たすためには担い手確保と適切な価格転嫁が急務となっています。
こうした状況を踏まえ、「担い手確保」「処遇改善」「働き方改革」「生産性向上」を目的として、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」の改正が2024年6月に公布、2025年12月に全面施行されました。
国土交通省(国交省)の資料でも、建設業の賃金は全産業に比べ低く、長時間労働も常態化しており、若者離れや技能者不足が顕著であることが示されています。
こうした状況が、法改正の大きな背景となっています。
本コラムでは、「建設業法・入契法」一部改正の背景と目的を解説します。
目次
改正の主要ポイント
1. 低すぎる請負代金・短工期の契約締結を禁止
改正法によって、発注者・受注者間で
- 不当に低い請負代金(建設業法第19条の3)
- 著しく短い工期(建設業法第19条の5)
の契約締結の禁止に関する条約が新設・整備されています。
これは、原価割れ受注を防ぎ、適正な工期を確保することで、現場の安全性や品質確保、ひいては技能者の処遇改善につなげる政策的措置です。
2. 見積り・内訳書の適正化
改正法では、見積書および入札内訳書に記載すべき事項が明確化されました。
- 通常必要と認められる材料費・労務費などを著しく下回る見積り依頼の禁止
- 不当な見積変更依頼の禁止
また、入契法(公共工事の入札及び契約の適正化法)第12条に基づき、公共工事の入札内訳書の記載内容についても明確化が行われました。
これにより、発注者の恣意的な価格引下げ要請や、元請から下請への不当な単価圧縮などが防止できます。
3. 労務費を守る「労務費基準」の新設
今回の改正の最重要項目の一つが、労務費基準の制度化です。
中央建設業審議会が、
- 技能者に支払うべき労務費の基準を策定・勧告できるようになりました。
これは、建設技能者が適正な賃金を得られるよう、産業構造全体で労務費が確保される仕組みです。
公共工事・民間工事を問わず、発注者・元請・下請のすべての段階で適用される点が大きな特徴です。
これにより、長年問題視されていた
- いわゆる「労務費ダンピング」
- 賃金未払い・低賃金構造
に対する歯止めが制度的に強化されました。
4. 技術者配置に関する規制の合理化(働き方改革)
国土交通省は、建設業における働き方改革を進めるうえで、現場技術者の配置負担軽減を重要視しています。
改正法では、以下のような規制緩和が実施されました。
● 監理技術者の複数現場兼任の容認
施行管理技士補の補佐がある場合、監理技術者は複数現場を兼務可能となりました。
● 主任技術者の配置要件緩和
一定規模以下の工事については主任技術者の配置が不要化されます。
これにより、限られた技術者を有効活用し、現場の人員不足に対応することができます。
5. ICT活用と施工効率化の促進
改正法では、国土交通大臣が ICT※活用を含む施工管理の指針 を策定することが明確に規定されました。
国交省資料では、遠隔技術を活用した現場管理、元請・下請間でのデータ共有などが例示されています。
これにより、現場の生産性向上が期待されます。
また、公共工事では次のような合理化が導入されました。
※ICTは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では「情報通信技術」を指し、情報の生成・保存・伝達・活用を可能にする技術の総称。
建設業のICT(情報通信技術)は、建設プロセスの効率化や生産性向上を目的とした技術であり、国土交通省の「i-Construction」施策の一環として推進されています。
● 施工体制台帳の提出義務の合理化
ICTで施工体制を十分確認できれば、従来必須であった台帳提出を省略可能とする措置が設けられています。
6. 資材高騰への対応強化(契約変更ルールの明確化)
近年の資材価格の高騰に伴い、建設現場ではコスト増が深刻化していました。
改正法では、
- 契約書に価格変動時の「変更方法」を明記する義務
- 契約変更協議を受注者が申し出た場合、発注者は誠実に協議に応じる努力義務(公共工事では義務)
が規定されました。
これにより、資材高騰の負担が一方的に受注者に押し付けられる事態を防止します。
まとめ:今回の改正の本質
今回の法改正は、単なる制度修正ではなく、日本の建設業全体を「持続可能な産業」へ転換するための大規模改革です。
改正が目指すもの
- 技能者が適正な賃金と働きやすい環境を得られる建設業
- 不当な価格競争を排除し、品質と安全を確保する工事契約
- ICT活用や規制合理化による高効率の施工体制
- 若者が入職したくなる健全な産業構造
- これらは、社会インフラ整備に不可欠な建設業の未来を守るための重要な改革です。
改正は現場の安全と品質、そして技能者の処遇向上を後押しする重要な一歩です。適正な契約と働きやすい環境づくりで、持続可能な建設業をともに実現していきましょう。
参照サイト
建設産業・不動産業:建設業法、入契法の改正について – 国土交通省
建設産業・不動産業:建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について – 国土交通省
建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律(概要)
【国交省】建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律の全面施行について | 一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会
建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案 | 内閣法制局